HOME > 不動産用語集

不動産用語集

鑑定評価書(鑑定評価報告書)
鑑定評価書は不動産鑑定業者が評価依頼者に交付する文書であって鑑定評価の成果を記載する。これの交付は業者に課せられた法律上の義務である。鑑定評価書に対しその実質的内容をなすものは不動産鑑定士(補)の作成した鑑定評価報告書である。鑑定評価報告書は実際に鑑定評価業務を担当した不動産鑑定士等が業者へ提出する文書で、鑑定評価の基本的事項、鑑定評価額決定の理由等を明確に記載し、担当不動産鑑定士等の責任の所在を示すことを本旨とする。
鑑定評価の方式
鑑定評価によって不動産の価格(賃料)を求める方式としては、不動産の再調達原価に着目する原価方式、取引事例や賃貸事例に着目する比較方式及び不動産から生ずる収益に着目する収益方式の三方式がある。三方式の採用は物の価格における三面性(費用性、市場性及び収益性)に対応して不動産の価格分析を行うことに基づく。したがって、鑑定評価を行う場合は、原則として三方式が併用される。もっとも案件によっては三方式を併用することは不可能でその一または二方式だけによることもある。各方式の適用によって導き出された価格(賃料)を試算価格(賃料)というが、この試算価格(賃料)を総合調整して最終的に鑑定評価額が決定されることになる。
基準地の標準価格
地価公示法による国の地価公示制度と並んで、都道府県知事がそれに準じて行う地価調査が昭和49年度から実施されている。この地価調査は基準地を定めてその標準価格が公告されるものであるが、昭和50年度以降は、毎年7月1日の時点で、国土利用計画法施行令第9条に定める方法により行われる。この基準地の選定は都市計画区域以外の町村の区域等からも行われる。平成4年の基準地数の全国計は25,788地点であった。この標準価格は地価判定上国の公示価格に準ずる有力な指標であった。
原価法
不動産の鑑定評価の三方式の一つである原価方式のうち、不動産の価格を求める手法である。原価法は価格時点における不動産の再調達原価(新しく建築または造成等を行って再調達する場合の原価)を求め、これに減価修正を行って試算価格を求める手法であり、一般に建物、構築物等のようにその再調達原価の把握、減価修正の可能な不動産の場合に有力な手法となるが、反面、市街地内の土地等には不向きであることが多い。この方法に基づく試算価格は積算価格と呼ばれる。
公示価格
国土交通省の土地鑑定委員会が地価公示法に基づき、毎年1回公示する標準地の単位面積当たりの正常な価格をいう。この公示は官報に、価格のほか標準地の所在地、地番、地積、形状、標準地及びその周辺の土地の利用の現況、標準地の前面道路の状況、価格判定の基準日(通常、毎年1月1日)等を登載する方法で行われ、平成5年度においては都市計画区域のうち約70,312km2を対象に20,555地点の標準地について調査された。なお、国土利用計画法第12条による規制区域の指定がなされた区域については地価公示は行われない。
収益還元法
不動産の鑑定評価方式の一つで収益方式のうち不動産の価格を求める手法であって、対象不動産が将来生み出すであろう純利益の価格時点における現価の総和をもってその不動産の価格とする方式である。これは不動産の純収益を適正な還元利回りで還元することによって求められる。この方式による試算価格を収益価格という。
収益分析法
不動産の鑑定評価方式の一つで収益方式のうち賃料を求める手法であり、一般の企業経営にかかわる不動産について適用される。一般の企業経営にかかわる総収益を求め、これに必要諸経費等を加えることによって、その試算賃料たる収益賃料を求める。
都道府県地価調査
国土利用計画法の施行に伴い、土地に関する権利の移転等についての規制を適正、円滑に運用するため、都道府県知事は選定された基準地の価格を昭和50年から毎年7月1日現在で調査し、その結果を公報等で発表する。また、国土交通省でも各都道府県の調査結果をとりまとめて、公表している。この調査は国の行う地価公示と同様の方法で行われるが、都市計画地域外にも基準地を設けている。調査地点は、平成5年調査では全国で、宅地が28,771、林地が1,229である。したがって、この調査は地価公示法によるものではないが、実際にはこの調査結果は公示価格に準ずるものとして土地取引における一つの尺度として用いられる。
取引事例比較法
国土交通省の土地鑑定委員会の行う地価公示は、全国の都市計画区域のうち、平成5年度においては約70,312km2の範囲において、住宅地、商業地、工業地の用途区分によりそれぞれその地域の価格水準を示すのに適当な代表的、平均的な一団の土地について行われる。公示価格が判定させるその一団の土地が標準地と呼ばれる。平成5年の地価公示においては、標準地の地点数は市街化区域18,057、市街化調整区域1,698、その他の都市計画区域800、計20,555となっており、市街化区域では用途地域によって異なるが、住居地域においては0.5〜0.7km2当たり、商業地においては0.3km2当たり1地点、市街化調整区域ではおおむね20km2当たり1地点、その他の都市計画区域ではおおむね23km2当たり1地点の割合となっている。
不動産
real estate 土地及びその定着物をいう。物のうち動産に対立する概念であり、両者はその公示方法を異にする。土地の定着物には、建物や公示方法が施された樹木のように独立の不動産とされるものと、石垣のように土地の一部分とされ、独立の不動産とみなされないものとがある。他に、工場財団等も不動産とみなされる。
不動産の鑑定評価
一般の商品の価格が自由なプライス・メカニズムのもとで形成されるのに対し、不動産は個別性が強く、取引市場も局限されているので、自由なプライス・メカニズムが成立し難い。不動産、特に土地の適正な価格を求めようとすれば、合理的な市場の価格形成機能に代わって不動産の適正な価格を判定する作業が必要となる。このような意味で、不動産の鑑定評価とは合理的な市場があったならばそこで形成されるであろう正常な市場価値を表示する価格を鑑定士等が的確に把握することを中心とする作業である。具体的には次の手順を合理的な判断のもとに秩序だてて誠実に行うことである。1.鑑定評価の基本的事項の確定、2.処理計画の策定、3.対象不動産の確認、4.資料の収集及び整理、5.資料の検討及び価格形成要因の分析、6.鑑定評価方式の適用、7.試算価格または試算賃料の調整、8.鑑定評価額の決定、9.鑑定評価報告書の作成。
立木評価
対象立木の確定、立木調査による樹種、林齢、数量等の把握確認、評価時点の確定などの後、立木評価を行う。林齢及び評価の目的に応じて評価の手法が異なる。一般には、伐期に達した立木の評価には市場価逆算方式を、伐期に達しない立木には、例えば幼齢期のものは費用性を重視する費用価方式、幼齢期経過後伐期前のもののうち立木補償額を求める場合は現在年齢と伐期齢の年齢との間に通常期待される収益を前価計算する期望価方式、その他の場合には幼齢期から伐期までの管理費等とこの間の間伐収入等とが相殺されることを前提としたグラーゼル式を採用して評価することが多い。

〜日経文庫「不動産用語辞典」(日本不動産研究所編)より〜